この記事について

米国連邦政府は90年代初頭に遡るIT投資マネジメント改革の歴史を有する。2009年に成立したオバマ政権では過去の改革を土台としつつ、徹底した情報公開を原則とするオープンガバメントの理念を軸として、公開情報に基づく一般国民からの監視の目による外圧を用いたIT投資マネジメントの技法が確立しつつある。

オバマ政権におけるIT投資マネジメントの中核的枠組みは、ITダッシュボードと呼ばれるIT支出情報の公開Webサイトと、要注意プログラムを対象になされる質疑応答・対策決定のレビューであるところのTechStatセッションである。情報公開を土台としてITダッシュボードが成立し、ITダッシュボードの情報から要注意プログラムが検出され、TechStatセッションにより是正が図られるという流れがある。

以上のような行政透明性の原則に基づく外圧主導型の改革アプローチと双璧をなすのが、2010年9月に発行された「ITマネジメント改革のための25の施策」である。同施策はクラウド型サービスの積極的導入という技術的側面と、IT投資マネジメントを支えるノウハウや人材の強化という対人的側面からなる。同施策はITマネジメントの改善とは何であるのかを具体的に規定し、達成すべき目標を明確にしたものであって、省庁の取組という自発性主導型の改革アプローチとなっている。

※本稿は2012年7月時点での調査に基づきます。

PDF版の原稿はIT_Reform.pdf

記事一覧

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
1.1. 連邦政府におけるITマネジメントの枠組み:IT調達制度の問題点
米国連邦政府の現代的な調達制度は80年代以降に形成されたものであり、IT調達に対する適応が進むようになったのはごく最近のことである。このため、鈍重で拙速な一般的な調達制度と、迅速性の要求されるIT調達の間には不一致がある。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
1.2. 連邦政府におけるITマネジメントの枠組み:ITマネジメントの問題点
IT調達の難しさは調達制度との不一致だけに由来するものではない。ITマネジメントには官民を問わず、要件定義やプロジェクトマネジメントの重要性と難しさが伴うことがよく知られる。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
1.3. 連邦政府におけるITマネジメントの枠組み:90年代のITマネジメント改革
90年代に入るとIT調達に特化した調達制度の法制化が進む。その中でも現在の枠組みを形作る上で大きな役割を果たしているのが連邦調達簡素化法(FASA)とクリンガー・コーエン法である。特に後者はITアーキテクチャの活用を盛り込むことで、以後のITマネジメント改革の流れを性格づけた。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
1.4. 連邦政府におけるITマネジメントの枠組み:00年代のITマネジメント改革
2000年代に入るとブッシュ政権の行政改革が始まり、その柱の1つとして電子政府政策や調達制度改革の推進が取り上げられることとなった。特に前者の一部となるFEAプログラムは連邦政府における現行のIT投資マネジメントの枠組みそのものとなっている。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
1.5. 連邦政府におけるITマネジメントの枠組み:CPICの枠組み
IT投資マネジメントに対する配慮は予算プロセスにも及んでいる。連邦政府はIT予算の統制にCPICと呼ばれる仕組みを導入することで、ポートフォリオマネジメントの仕組みを予算プロセスに組み込んでいる。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
2.1. オープンガバメントの概略:オープンガバメントの原則と指針
オバマ政権のIT戦略はオープンガバメントの名でよく知られる。オープンガバメントの骨子は徹底した情報公開と国民からの声の収集という正に開かれた行政の実現にあるが、このメカニズムを援用する形で強力なITマネジメントの手法が確立しつつある。後続の議論のため、ITマネジメント改革から少し離れてオープンガバメントの概略について述べると共に、先進的な情報公開の状況と、情報公開に基づくマネジメント改革の例を紹介する。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
2.2. オープンガバメントの概略:透明性原則に基づく財政支出の公開
オープンガバメント指令に含まれる4つのステップの内、ITマネジメント改革との関連が深いのは情報のオンライン公開とその質の向上である。この2つのステップに関し本稿執筆時点での公開状況を簡単にまとめる。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
2.3. オープンガバメントの概略:オープンガバメントに基づくマネジメント改革
オープンガバメントに基づくマネジメント改革の実例としてPaymentAccuracy.govの取組を紹介する。PaymentAccuracy.govは政府から支払われるべきでなかった不当支出と呼ばれる政府支出の状況を開示するWebサイトである。一般公衆からの圧力を援用することで改善を促す仕組みの例となっている。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
3.1. ITダッシュボードとTechStatセッション:ITダッシュボードとTechStatセッションの概要
オープンガバメントの枠組みに則った外圧に基づくマネジメント改革はIT投資マネジメントにも当てはまる。その筆頭が、省庁のIT投資プログラムの概況を開示するITダッシュボードとその中で見つかった問題事案について集中質疑を行うTechStatセッションである。しかしITダッシュボードは、オープンガバメントの開始以前からの、連綿と続く連邦政府内のマネジメント改革の下積みがあって初めて可能になった取組である。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
3.2. ITダッシュボードとTechStatセッション:ITダッシュボードとTechStatセッションの概要
ITダッシュボードは2009年6月より運用開始となったが、その前身はVUE ITと呼ばれる同種のIT投資情報の開示システム(Webサイト)であり、更にその原型は行政管理予算局のまとめる監視対象ITプログラムの一覧Management Watch Listであった。そもそもの起点となるのは、1996年のクリンガー・コーエン法によって行政管理予算局に課せられた、連邦政府全体でのIT投資マネジメントの改善義務である。以下ではこの間の事情を振り返る。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
3.3. ITダッシュボードとTechStatセッション:ITダッシュボード上の情報
ITダッシュボードは連邦政府内の各省庁の主要なIT投資プログラムについて情報公開を行うWebサイトである。ITダッシュボードには「ポートフォリオと詳細情報」「全体構造とトレンドの可視化」「分析のためのデータ抽出」という3つの側面からデータを閲覧する機能があり、行政IT投資の国民による分析を可能にしている。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
3.4. ITダッシュボードとTechStatセッション:TechStatセッションの概要
TechStatは高リスクプログラムを対象に実施される対話型の集中質疑であり、行政管理予算局の関係者とIT投資プログラムの実施省庁の関係者とが、1時間と区切った中で直接に議論を行うセッションである。セッションの結果として選択される対策の中にはプログラムの一時中止や廃止も含まれる。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
3.4. ITダッシュボードとTechStatセッション:TechStatセッションの概要
TechStatは既に一定のコスト削減を実現している。CIO協議会による報告書から実績を振り返ると共に、同じ仕組みを利用したPortfolioStatについても簡単に紹介する。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
4.1. ITマネジメント改革のための25の施策:概要
オバマ政権ではオープンガバメントとは別系統の取組として連邦政府内におけるITマネジメントの改革を推進している。その焦点となるのが2010年12月に指針が示された「ITマネジメント改革のための25の施策」である。同施策は過去の経緯を踏まえつつ具体的な成果を着実に実現することに的を絞った内容となっている。第4章では本稿執筆時点での実績と合わせて同施策について述べる。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
4.2. ITマネジメント改革のための25の施策:「軽量な技術」と共有ソリューションの導入
25の施策におけるコスト削減効果の大部分はデータセンターの統合によって生み出されている。この動きはクラウドサービスの積極的採用とも一体化しており、目に見える具体的な成果の1つをもたらしている。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
4.3. ITマネジメント改革のための25の施策:PART II:大規模ITプログラムのマネジメント効率化
PART IIの施策のねらいを要約すれば、民間に比べて遅れをとっているITプログラムマネジメントの体制および能力を強化することと、その結果として迅速で機動性の高いIT投資を実現すること、である。その焦点はモジュラー型開発の定着に当てられている。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
4.4. ITマネジメント改革のための25の施策:プログラムマネジメントの強化
PART IIにおける第一の柱となるのがプログラムマネジメントのノウハウと人材に関する強化である。ベストプラクティスの共有と、人材育成・交流プログラムの推進を柱として、従来より重要とされてきたポイントを確実に押さようとする動きが見られる。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
4.5. ITマネジメント改革のための25の施策:技術サイクルと調達プロセスの親和性向上
IT調達マネジメントの能力を強化するにはITマネジメントだけでなく調達プロセスに対する能力強化も求められる。IT調達には特有の配慮事項が少なくない。25の施策では、この領域にも焦点を当てている。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
4.6. ITマネジメント改革のための25の施策:技術サイクルと予算プロセスの親和性向上
IT調達において求められる迅速性は調達プロセスの改善だけでは達成しえない。25の施策では連動する予算プロセスの改革にも着手している。しかし、議会の強力を要するこの領域の進捗ははかばかしいとは言えない。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
4.7. ITマネジメント改革のための25の施策:ガバナンスの軽量化とアカウンタビリティの向上
連邦政府では従来よりIT投資のガバナンス機構を整備してきたが、25の施策では引き続きその細部を磨き上げると共に、TechStatの活用を深めていく。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
4.8. ITマネジメント改革のための25の施策:産業界との交流強化
IT調達ではITに関する専門的な知識を必要とする場面が少なくない。常日頃から産業界とのコミュニケーションを深め、最新のIT事情に通じておくことは重要である。一方、公共調達の一般論として、産業界とのコミュニケーションは忌避される傾向がある。しかし現在ではこれは間違った姿勢となっている。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
5.1. 政府説明責任院(GAO)による評価:支出情報の公開に対する評価
これまでの章で述べてきた内容は基本的に連邦政府自身の開示する資料に基づいている。これらの施策に対し、政府説明責任院(GAO)により第3者の視点からなされた多数の評価報告書があり、その記載によれば進捗にも成果にも課題があるとされる。第5章ではこれらの評価報告を概観し、オバマ政権の施策の課題を取り上げる。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
5.2. 政府説明責任院(GAO)による評価:ITダッシュボードとTechStatセッションに対する評価
情報公開の質に問題があるとの指摘はUSASpending.govに限定された問題ではない。IT投資に直接に関わるITダッシュボードにも、更にその原型であるManagement Watch Listにも同様の問題は見られ、その解消に向けた取組が連綿と続いて今に至っていることは第2章でも触れた通りである。以下では過去に認識された課題を掘り下げると共に、それがITダッシュボードにおいてどう改善され今もなお残存しているのか、そしてTechStatセッション自体にも見られる各種の課題がどのようなものであるのかを述べる。

2013年03月24日
オバマ政権下のITマネジメント改革
5.3. 政府説明責任院(GAO)による評価:ITマネジメント改革のための25の施策に対する評価
本稿執筆時点では25の施策はひとまずの完了を見ている予定となっている。しかし、幾つかの施策については最後に遅延の報告がなされて以後、具体的な進捗を示す資料が開示されていない。政府説明責任院(GAO)の直近の調査でも、行政管理予算局(OMB)の主張する進捗と実態とには乖離があるとの指摘がなされており、単純に取組が成功したとは言えない状況である。