2013年03月24日

オバマ政権下のITマネジメント改革

1.5. 連邦政府におけるITマネジメントの枠組み:CPICの枠組み

IT投資マネジメントに対する配慮は予算プロセスにも及んでいる。連邦政府はIT予算の統制にCPICと呼ばれる仕組みを導入することで、ポートフォリオマネジメントの仕組みを予算プロセスに組み込んでいる。

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以上に述べた取組のそれぞれは基本的に調達またはIT調達の枠組みに属するものであった。これに対し、予算プロセスの観点から構成されたITガバナンスの手法が確立している。これがCPIC*1(資本プログラミングと投資管理)である。CPICはクリンガー・コーエン法によって導入された行政管理予算局主導のIT予算管理手法であり、ITポートフォリオとビジネスケースの活用を要諦とする。

ITポートフォリオとは現在計画中または進行中のIT投資計画の一覧表であり、書式53と呼ばれる指定様式に従って各省庁から行政管理予算局へと年次予算請求の一環として提出される。ITポートフォリオの各行はIT投資プロジェクトを表す。

ビジネスケースとはITポートフォリオに含まれる各IT投資プロジェクトの情報をまとめた概要資料であり、書式300と呼ばれる指定様式を用いてITポートフォリオと同様に行政管理予算局へと各省庁から提出される。ビジネスケースにはそのIT投資プロジェクトに対する支出を正当化するに足るだけの理由や必要性を記述しなければならない。行政管理予算局では収集した情報を分析することにより、危険性のあるIT投資プロジェクトの発見・指導や省庁間で内容の重複する投資の統合機会を模索することが可能となる。

収集した情報の分析にあたって役立つのがFEA参照モデルである。行政管理予算局に提出されるIT投資プロジェクトは、それがFEA参照モデルに含まれるIT投資分類コードで言うと何に当たるのかが付記されている。この分類コードを参照することで、行政管理予算局では同種のIT投資を特定することができる。あるいは、様々なIT投資プロジェクトのパフォーマンスが良いのか悪いのかを判断する上で、ベンチマーク基準との比較を容易にする効果も期待される。一見些細に思えるこのような利点も、FEA参照モデル抜きには容易に実現できないものであり、連邦政府におけるマネジメント手法の際立った合理性が表れていると言える。

これに対し、各省庁にとってのCPICとは、ITポートフォリオおよびビジネスケースを洗練させると共に、計画段階で約束したITポートフォリオおよびビジネスケースを計画通りに実施してみせることである。前者は要件定義の困難に、後者はプログラム/プロジェクトマネジメントの困難におおよそ対応する。民間でのベストプラクティスを元に、これらの領域での模範的取組の指針をまとめたものが資本プログラミングガイド*2である。

資本プログラミングガイドは予算要求の規則である通達A-11*3の付属文書であり、資本制資産への投資に際して考慮すべき事柄や陥りやすい失敗への注意を表したガイダンスとしてまとめられている。多くの内容が計画段階でのベストプラクティスの整理に割かれている一方で、初期導入後の長期運用フェーズにおけるマネジメントや、最終的な撤去・廃棄に関するマネジメントにまで言及しており、IT投資プロジェクトのライフサイクル全体を見据えた内容となっている。サービス調達改革法によって拡張された「調達」の意味が色濃く反映されていると言える。

以上のように、連邦政府における調達改革、予算マネジメント改革、そしてIT投資マネジメントの改革は相互に関わりあいながら長く変遷を重ねてきている。にも関わらず、現在もなお多くの課題が残されている。次章以降ではここまでに述べた背景を踏まえつつ、オバマ政権におけるITマネジメント改革について論じる。


*1
CPIC : Capital Programming and Investment Control
*2
“Capital Programming Guide v3.0”, (OMB, 2011/08)
https://www.whitehouse.gov/sites/default/files/omb/assets/a11_current_year/capital_programming_guide.pdf
*3
Circular A-11
https://www.whitehouse.gov/omb/circulars_a11_current_year_a11_toc