2013年03月24日

オバマ政権下のITマネジメント改革

2.3. オープンガバメントの概略:オープンガバメントに基づくマネジメント改革

オープンガバメントに基づくマネジメント改革の実例としてPaymentAccuracy.govの取組を紹介する。PaymentAccuracy.govは政府から支払われるべきでなかった不当支出と呼ばれる政府支出の状況を開示するWebサイトである。一般公衆からの圧力を援用することで改善を促す仕組みの例となっている。

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PaymentAccuracy.govは連邦政府の不当支出に関する情報を公開するWebサイトである。不当支出とは、間違った相手方への支払、正しい相手方への間違った金額の支払、裏付け文書のない支払、支払を受けた相手方による不適切な流用、に該当する政府支出を言う。不当支出は主に3つの要因により発生する。

  1. 文書作成および行政手続き上の不備
    • 連邦政府からの給付金に対する受給者からの申請について、その内容の正確性を裏付ける文書類を欠いたままで給付プログラムを運営している場合、これが不当支出の原因となる。この種の不備は、連邦政府、州政府、第三者機関によるデータ入力、分類、申請の処理、あるいは支払い手続きのミスによって生じる。
  2. 受給資格証明と医学的必要性に関する不備検証に必要な情報が存在しないあるいはアクセスできない状態にあり、受給者が受給要件を完全に満たしていることを確認できないままに給付プログラムを運営している場合、これも不当支出の原因となる。例えば必要でないにも関わらず車椅子を支給するなど、患者の状態から言って医学的には必要でないにも関わらず何らかのサービスを供給してしまうことでこの種の不備は生じる。
  3. 検証に関する不備
    • 検証に必要な情報が存在しアクセス可能であるにも関わらず、例えば受給者の所得や資産、就労状況などを確認することに失敗した場合、これも不当支出の原因となる。この種の不備は、失業保険の受給者が就職の報告を怠るなど、受給者が正しい情報を省庁に対して提供しておらず受給資格の喪失を見逃してしまう場合にも生じる。

不当支出の問題は以前より認識されており、2002年には不当支出情報法*1が制定されている。2010年にはオバマ政権の下で改正法*2が成立し、行政管理予算局内にも専門の部署*3 が設置されている。

2011会計年度における不当支出は1,150億ドルにも及び、その内の1,040億ドルが過払いに分類されている。従って、不当支出の削減により財政上の大きな節約を実現することができる。オバマ政権の当面の目標は、2011会計年度で4.7%に上る不当支出の割合を、2014会計年度において3.3%まで押し下げることである。

PaymentAccuracy.govには不当支出の現状と、不当支出削減に向けた取組の進捗状況が開示されている。これだけならば説明責任の履行という以上の役割を持たないように見えるが、Webサイトの一角には「不備の多いプログラム(High Error Programs)」と称するページがあり、この中では特に不当支出の多いプログラムに関する情報が開示されている。

PaymentAccuracy.gov

PaymentAccuracy.gov

この情報の中には不当支出の規模と削減状況は勿論のこと、当該プログラムの責任者の個人名が掲載されている。この情報は会員登録などの手続きなしに誰もが参照できる。つまり、不当支出の改善が進まない場合、その事実や程度を誰もが容易に知ることができ、更にその責任者まで特定することが可能な仕組みとなっている。PaymentAccuracy.govでは合わせて不当支出の原因もマネジメントの質の問題として説明されており、国民は何が政府の中で問題となっているのかを容易に想像することができる。これらの仕組みは総体として言外の強い圧力を各省庁にかけるものとなると考えられる。

PaymentAccuracy.govは、情報公開を通じてマネジメント改革への圧力を世論形成に基づき生み出す、言わば外圧主導型の行政改革の可能性を示す例と言える。マネジメント改革の領域にオープンガバメントが提起する新しい可能性である。*4


*1
P.L.107-300, “Improper Payments Information Act of 2002”, (Congress, 2002/11/26)
https://www.congress.gov/bill/107th-congress/house-bill/4878
*2
P.L.111-204, “Improper Payments Elimination and Recovery Act of 2010”, (Congress, 2010/07/22)
https://www.congress.gov/bill/111th-congress/senate-bill/1508
*3
Office of Federal Financial Management Improper Payments
https://www.whitehouse.gov/omb/financial_fia_improper/
*4
これ以外にも連邦政府はpartner4solutions.govというWebサイトを運営している。このサイトは連邦政府の抱える様々な課題に関し解決策となるアイデアを広く一般から募る常設窓口である。この窓口に寄せられた有望なアイデアは行政管理予算局を交えたフォーラムにおける議論の俎上となり、本格的な取組の推進が決まった場合にはそのための諸費用を充当する資金が拠出されることになっている。本稿執筆時点で資金拠出の対象となった事例を1つ挙げると、雇用保険の不当支出を改善するためのアイデアとして、民間金融機関で用いられる挙動不審な口座預金額の変動を検出する手法を応用し、資格を喪失しているにも関わらず受給を続けている対象者を発見することが提案されている 。パイロットプロジェクトとして資金拠出の対象となっているアイデアは本稿執筆時点で他にも5つあり、オープンガバメントの原則に言う参加と協業の例としても注目に値する。