2013年03月24日

オバマ政権下のITマネジメント改革

4.1. ITマネジメント改革のための25の施策:概要

オバマ政権ではオープンガバメントとは別系統の取組として連邦政府内におけるITマネジメントの改革を推進している。その焦点となるのが2010年12月に指針が示された「ITマネジメント改革のための25の施策」である。同施策は過去の経緯を踏まえつつ具体的な成果を着実に実現することに的を絞った内容となっている。第4章では本稿執筆時点での実績と合わせて同施策について述べる。

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前章までで述べた通り、連邦政府には15年以上に及ぶITマネジメント改革の長い歴史があり、その中で色々の仕組みが整備されてきたものの、オバマ政権に至って尚、かねてよりの課題が解決されたとは言えない状況が続いていた。後述する改革指針の冒頭で述べるところによれば、依然として看過できない水準の予算超過、スケジュール遅延、業務要件の未達といった問題が生じており、その背景には旧態依然とした大型プロジェクトのマネジメント作法があると指摘している。こうした状況は更なるITマネジメント改革の必要性を生み出していた。

連邦政府は2010年12月9日付で「ITマネジメント改革のための25の施策」*1を発表した。同施策は同日に行政管理予算局主催で開かれたITマネジメント改革フォーラムのなかで連邦政府CIOのVivek Kundra氏より公開された*2ものであり、先立つ過去18ヶ月の間に、議会、各省庁のCIO、調達部門の上級職員や、調達、プログラムマネジメント、産業界、学術界の専門家らを広く招いて議論を行って得られた色々の勧告に基づいている。同施策は、オバマ政権におけるITマネジメント改革を6つの領域に分かれた25の施策として打ち出している。施策の全体構成は次の通りである。

PART I:オペレーションの効率化
A.「軽量な技術」と共有ソリューションの導入
1. データセンター統合計画の実施を補強する。
2. データセンター共同利用のための政府横断型の取引所を設ける。
3. 「クラウド優先」のポリシーへ切り替える。
4. セキュアなIaaSソリューションのための典型契約を整備する。
5. コモディティ型サービスのための典型契約を整備する。
6. 共有サービスのための戦略を策定する。
PART II:大規模ITプログラムのマネジメント効率化
B. プログラムマネジメントの強化
7. ITプログラムマネジメントに関する正式なキャリアパスを策定する。
8. ITプログラムマネジメントのキャリアパスを連邦政府全域に拡げる。
9. 統合プログラムチームの運用を要求する。
10. ベストプラクティスの共有プラットフォームを立ち上げる。
11. TechFellowプログラムを立ち上げる。
12. ITプログラムマネージャの官民間での異動を可能にする。
C1. 技術サイクルと調達プロセスの親和性向上
13. IT調達専門家の精鋭部隊を設計・育成する。
14. IT調達のベストプラクティスを特定し連邦政府全域で採用する。
15. モジュラー開発のためのガイダンスとひな形文書を整備する。
16. 革新的な中小技術企業への参入障壁を低減する。
C2. 技術サイクルと予算プロセスの親和性向上
17. モジュラー開発に適したIT予算のモデルを議会と共同で策定する。
18. 柔軟なIT予算モデルのためのガイダンスと参考資料を整備する。
19. 柔軟なIT予算モデルの適用範囲を議会と共同で拡げる。
20. 各省庁のCIO管轄下のコモディティ型のIT支出を議会と共同で整理統合する。
D. ガバナンスの軽量化とアカウンタビリティの向上
21. 投資レビュー委員会(IRB)を改革し強化する。
22. 各省庁のCIOと連邦CIO協議会の役割を改正する。
23. TechStatを部局レベルで展開する。
E. 産業界との交流強化
24. 「迷信打破」キャンペーンを立ち上げる。
25. 要求定義に先立つ官民交流のための双方向プラットフォームを立ち上げる。

これらの施策はいずれも実施内容と期限*3が定まっており、過去の取組に比べて具体的に編成されている。発表時の表題にも「施策(Implementation Plan)」という語が用いられており、実効性を重視した取組であることが窺われる。過去の取組では法改正による新しい規則の採用や、新しいマネジメント作法の導入など、取組の開始と同時に導入される新たな概念を伴うことが常であったが、25の施策では現行法制の枠組みから逸脱することなく、道具立てとなる概念についても以前から存在しているもの*4を実際に導入するあるいは駆使することに注力した構成*5となっている。

加えて注意しておきたいのは、前章までで述べたオープンガバメントに基づくITマネジメントと異なり、25の施策が連邦政府のITマネジメント体制や仕組みなど内面の改善に的を絞ったものとなっていることである。前章までの内容との対比で全体を捉えるならば、透明性に基づく外圧を利用したオープンガバメント型のITマネジメント改革と、その改革を支えることになる内面の基礎体力作りを手がけるITマネジメント改革の両立によって、オバマ政権のITマネジメント改革が構成されていると言える。

本稿執筆時点ではこれらの施策の多くが完了期限を迎えており、議会との協力が必要なものを除いて概ね予定通りの進捗が達成できたとされている*6*7。2011年の秋頃には連邦CIOであるVivek Kundra氏が退任しSteven VanRoekel氏が後任になるという行政管理予算局内での体制変動*8はあったものの、施策は途絶えることなく継続している。当初設定された全体の完了期限は2012年7月9日であり、現在も残る施策の完了に向けて取組を推進中である。

次節以降ではこれらの施策の詳細を、6つの領域ごとに2011年末時点での進捗およびこれまでの実績と合わせて述べる。


*1
“25 Point Implementation Plan to Reform Federal Information Technology Management”, (OMB, 2010/12/09)
https://www.whitehouse.gov/sites/default/files/omb/assets/egov_docs/25-point-implementation-plan-to-reform-federal-it.pdf
*2
White House Forum on IT Management Reform
https://cio.gov/white-house-forum-on-it-management-reform/
*3
最も長いものでも18ヶ月以内の実施完了。
*4
例えばデータセンターの統合や共有サービスの活用はクイックシルバー・イニシアティブの頃から推進されている他、統合プログラムチームやモジュラー開発といった概念も古くから存在している。
*5
このことは、指針の中でも「ポリシー策定から実行と監督へ(By shifting focus away from policy and towards execution and oversight)」というフレーズで言い表されている。
*6
"Transforming Federal IT Management", (OMB, 2011/04/27) Transforming_Federal_IT_Management.ppt
*7
"Federal Information Technology: Doing More with Less Through Strategic Investments", (OMB, 2011/12/08)
https://www.whitehouse.gov/sites/default/files/omb/assets/egov_docs/itupdate.pdf
*8
その後Vivek Kundra氏はハーバード大学にて教職についた模様である。交代の日付が明記された資料は未確認でるが、各自の着任日付は次の通りである。

President Obama Names Vivek Kundra Chief Information Officer
https://www.whitehouse.gov/the-press-office/president-obama-names-vivek-kundra-chief-information-officer

President Obama Announces More Key Administration Posts
https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2011/08/04/president-obama-announces-more-key-administration-posts

U.S. C.I.O. to Serve Joint Fellowship at Harvard
https://cyber.law.harvard.edu/newsroom/vivek_kundra_fellowship