2013年03月24日

オバマ政権下のITマネジメント改革

4.5. ITマネジメント改革のための25の施策:技術サイクルと調達プロセスの親和性向上

IT調達マネジメントの能力を強化するにはITマネジメントだけでなく調達プロセスに対する能力強化も求められる。IT調達には特有の配慮事項が少なくない。25の施策では、この領域にも焦点を当てている。

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PART II:大規模ITプログラムのマネジメント効率化
C1. 技術サイクルと調達プロセスの親和性向上期限と進捗
13. IT調達専門家の精鋭部隊を設計・育成する。6: 完了
14. IT調達のベストプラクティスを特定し連邦政府全域で採用する。6: 完了
15. モジュラー開発のためのガイダンスとひな形文書を整備する。12: 推進中
16. 革新的な中小技術企業への参入障壁を低減する。18: 未着手

施策13.IT調達専門家の精鋭部隊を設計・育成する。

IT調達を専門とする人材の精鋭部隊とはどのような集団であるかを定義し、そのような集団を実際に構成する上で必要となるトレーニング機会の提供を中心に、人材育成面での支援を行う施策である。政府における調達は公平性や公正性の確保、関連法規の遵守といったコンプライアンス上の要求事項が多いが、IT調達の場合には更にそこへ加えてITに固有の特性を考慮した判断が求められる場合が少なくない。IT調達の専門家とは、連邦政府における公共調達プロセスの専門家であると同時に、ITにも知悉した人材を言う。本施策ではそのような高度人材からなる精鋭部隊を各省庁が内部に育成できるよう、連邦CIOと行政管理予算局の内局である連邦調達政策部が協力して、そもそも目標となるIT調達専門家の精鋭部隊とは何であるか、を明確に定義するとしている。注意すべきは、精鋭部隊の育成は各省庁が実際に行うのであって、25の施策に含まれるのはその手引きとなる情報の整備のみということである。本施策の直接の成果物となるガイダンス資料は2011年7月13日付で連邦調達政策部からの通達として発行されている*1

発行されたガイダンスによれば、IT調達の精鋭部隊(IT Acquisition Cadre)とは、IT調達に関連する業務に知悉した専門家の集団である。この部隊は単一種の専門家から構成されるのではなく、プログラムマネージャ、契約担当官(CO*2 )、契約担当代表者(COR*3 )の3種の人材を中心とする多種多様な人材からなる集団であり、この3種以外にも、対外窓口(リエゾン)担当、特定のIT製品分野に関する専門家、財務分析の専門家などが含まれうる人材の例として取り上げられている。主要3種の人材については、連邦調達研究所(FAI*4 )の管轄するスキル認定制度*5においてそれぞれ対応するFAC-PM(調達プロジェクト・プログラムマネージャ認定試験)、FAC-CO(調達契約担当官認定試験)、FAC-COR(調達契約担当代表者認定試験)の認定を受けていなければならないとしている。

この部隊が果たす機能について具体的な言及はガイダンスに含まれない。しかし、一般に言うところのPMO*6に相当する位置付けの集団と考えられる。即ち、PMO自身が個々のプログラム・プロジェクトのマネジメントを引き受けるのではなく、省庁内でIT投資事案が立ち上がるのに合わせて、企画のチェックや進め方のレビューなど、プログラムマネジメントに関する支援を第3者の立場から提供する。多様な人材の集団であるという意味では前述の統合プログラムチームにも似ているが、統合プログラムチームが個々のプログラムに対して遂行の責任を負う本質的に時限の組織であるのに対して、ここで言う精鋭部隊は省庁内のIT調達マネジメントの質の向上に対して責任を負い、常設されるものとなっている。

常設組織であるからには、基準を定めて編成するだけでなく、長期的な人材の育成を通じた維持と向上にも努めなければならない。この点でもガイダンスは、標準的なスキル習得のあり方について指針を示している。柱となるのは、座学講習、業務経験の蓄積、メンタリングの実施、の3つである。講習は連邦調達研究所や防衛調達大学校(DAU*7 )で提供される。メンタリングの実施については連邦調達研究所(FAI)がそのための仕組みを立ち上げる予定となっている。これらの柱を頼りつつ、IT調達の専門家にはスキル認定を受けた後にも継続的に自らの能力を維持・発展させ続ける義務が課せられている。スキル認定は有期であるため、こうしたトレーニングを怠っていると認定の更新ができなくなる制度である。

連邦調達政策部の発行したガイダンスにはこれ以外にも精鋭部隊の組織構造として考えられるパターンの例示が含まれる他、ガイダンスに記載の情報を参考にしつつ、精鋭部隊を創設あるいは維持・拡張するのか、そもそもこの種の機構を用いずに済ませるのかを判断するよう各省庁に求めている。その判断とIT調達分野の人材に関する課題を整理した上で、ITに限らない調達人材の管理計画の一環として行政管理予算局に提出することを義務付けており、いずれにせよ省庁は、精鋭部隊なしにIT調達を成功させるか、さもなくば精鋭部隊の活用に取り組むかの選択が迫られる格好となっている。

順番が前後するが、25の施策ではこうした取組の背景となる問題認識として、法制上はIT調達を円滑にこなすための道具が多く整えられているのに対し、連邦政府内の人材が制度に追いついていない、という見解を示している。実際、調達スキル認定制度や精鋭部隊(cadre)の立ち上げといった要素は今回の施策に合わせて登場したものではなく前ブッシュ政権の頃から継続しており、今回の施策も実効性を確立するための補強としての意味合いが強いと言える。

施策14.IT調達のベストプラクティスを特定し連邦政府全域で採用する。

IT調達に特化した調達チームを有する省庁のベストプラクティスを抽出し、連邦政府全域へと広める施策である。分析の際に注目する点としては、スタッフがITプログラムチームで実働可能な水準へと達するのに必要なIT調達への専任期間の長さ、最も有効性の高いトレーニングと職務経験、適切な組織構造、調達戦略や実践の成功事例、が挙げられている。この分析には25の施策開始から6ヶ月を費やすものとしており、2011年末時点の進捗報告でも完了となっている。抽出結果となるベストプラクティスの内容は不明である。

25の施策では、更に引き続いて連邦調達政策部(OFPP)が国土安全保障省(DHS)およびエネルギー省(DOE)と連携し、連邦政府全域にまたがるIT調達の精鋭部隊編成に向けた取組を推進するともしている。国土安全保障省(DHS)とエネルギー省(DOE)ではIT調達の精鋭部隊を2011年中に編成する予定となっているためである。こちらの取組は18ヶ月内の達成を目標としており、2011年末時点での進捗報告はない。


*1
“Guidance for Specialized Information Technology Acquisition Cadres”, (OFPP, 2011/07/13)
https://www.whitehouse.gov/sites/default/files/omb/procurement/memo/guidance-for-specialized-acquisition-cadres.pdf
*2
CO : Contracting Officer
契約担当官は契約手続き上の責任者であり、契約のコンプライアンスに特に深く拘る。
*3
COR : Contracting Officer Representative
契約担当代表者は契約担当官が設計した調達契約および手続きの実施面における実務担当者のことを言う。
*4
FAI : Federal Acquisition Institute
https://www.fai.gov/
*5
FAC : Federal Acquisition Certification
https://www.fai.gov/drupal/certification/certification-and-career-development-programs
*6
Project Management Office
*7
Defense Acquisition University
https://www.dau.mil/