2013年03月24日

オバマ政権下のITマネジメント改革

4.5. ITマネジメント改革のための25の施策:技術サイクルと調達プロセスの親和性向上

施策15.モジュラー開発のためのガイダンスとひな形文書を整備する。

モジュラー開発を前提とした調達契約を締結する際の考慮事項と指針を整理したガイダンスを整備する施策である。整備対象にはガイダンス以外にひな形文書やサンプルが含まれる。連邦調達政策部主導の下、政府内の調達関係者やIT業界の関係者を交えての共同作業によりとりまとめを進めるものとしている。2011年末時点では推進中となっていたが、ガイダンスについては2011年6月14日付で公開された*1

公開されたガイダンスの大きく2つのセクションからなる。前半の主部はモジュラー開発の関連用語を解説し、その特性について論じている。後半の主部はモジュラー開発を前提としたモジュラー契約について、連邦調達規則上利用することのできる各種の規定と、いつどのように判断してそれらの道具を使い分けるべきかについての判断の指針を論じている。

ガイダンスによれば、モジュラー開発とは全体的な目標を支える要素としてのIT投資、プロジェクト、活動について焦点を当てたものであり、目標達成に向けて徐々にその実施範囲が広がっていく基本的特徴を持つ。端的に言ってしまえば、最終成果物を幾つかのモジュールに分割し、モジュールごとに順次開発を進めるということである。モジュールとして何が適切な単位となるのかは事案により異なる。意識すべき単位として、IT投資、プロジェクト、活動という3つをガイダンスでは挙げている。IT投資は予算配分上の単位でありしばしば非常に大きな金額を伴い、個々のシステム開発プロジェクトを包括する受け皿として位置付けられる。プロジェクトはそれぞれに明確な成果物を定義された有期の活動であり、活動はプロジェクトの要素である。モジュラー開発の単位はプロジェクトとなるのが通例と考えられているようである。活動の期間という意味では、プロジェクトについては長くとも6ヶ月以内には最初の成果物を出し、プロジェクト内の活動については90日以下の日数で区切るのが典型的な例とされる。IT投資をどうモジュールへと分割するかについては、仮想的な分割の一例が示されているのみで、詳細な具体例や判断の指針はガイダンスに含まれていない。

同じくガイダンスによれば、調達契約の設計時に考慮すべき次のような事柄がある。

  • 契約方式はモジュラー開発に適しているか?
    • 数量・納期限不定(IDIQ*2 )方式、一回のみの契約、段階的契約、パフォーマンス基準契約など連邦調達規則(FAR)の範囲内で利用できる選択肢が複数ある。
  • 支払いの戦略をどうするか?
    • これも同様に、固定価格、実費償還、インセンティブ設定など、受注事業者に対する報酬設定の方法に規則上の選択肢が複数ある。
  • 入札時の競争をどう活用するか?
    • 競争を促すように公募方法などを練りこめばコストを安く上げることができるが、他方で準備自身にコストが掛かる。
  • 契約条項と文言をどのように構成するか?
    • モジュラー開発の基本である段階的納品を補強するようスケジュール制約などを重視した条項を盛込むことや、前段階の納品物ありきで後続の発注が決まるような仕掛けを取り入れる戦術が使える。
  • その他の考慮事項は検討しているか?
    • 既にノウハウを有している他の省庁が提供する包括的基本契約に相乗りすることと、中小事業者の参画を促すことが考慮事項として取り上げられている。

巻末には付録としてパフォーマンス基準契約に用いるパフォーマンス基準業務定義書(PWS*3 )のひな形サンプルが収録されている。ただし、このひな形はわずか3ページのものであり、そのまま実用できるものであるかどうかは定かでない。

前述の通り、モジュラー開発が重視される理由は、マネジメント上のリスクが小さく納品サイクルも短いことによる。実例として、ガイダンスの付属メモ*4に記載されていた農務省のIT投資の紹介を抜粋する。

助成金受給者の状況をモニタリングする新しいソフトウェアの開発に着手する準備が整ったという時、農務省ではこれらの過ち(訳注:大型開発の推進が招いた失敗)を避けようと心に決めていた。農務省ではソフトウェアへの投資を個々のプロジェクトに分割し、最初のプロジェクトは女性、小児および自動のためのプログラムに対するマネジメント評価ツールにすることにした。更に、このプロジェクトを複数の活動に分割し、ツールの設計から進めていくことにした。農務省はこのソフトウェアの開発を受注事業者が順次進めるごとに利用者からのフィードバックが得られるよう契約をしつらえた。情報収集と顧客フィードバックからなるこれらのサイクルは、マネジメントしやすいプロジェクトの大きさと相まって、納品を成功裏に達成する助けとなった。納品は契約の締結から一年以内に達成された。利用者に対する納期は半減し、高く付く手戻りの非効率も避けることができたのである。加えて、(訳注:この第一歩の成功によって)他のプログラムに対応するための機能拡張を数ヶ月足らずの内にも素早くこなせるようになり、夏季フードサービスプログラムと財務マネジメントレビューにおいて既にそれを実践してみたのである。

モジュラー開発推進のねらいは、このような成果をより多くの省庁において実現することにある。

施策16.革新的な中小技術企業への参入障壁を低減する。

中小事業者に対する連邦政府の契約方針をより明確で包括的なものにするという施策である。2011年末の時点では未着手となっている。具体的な施策の内容は25の施策にも現れていないが、背景となる論理は述べられている。それによると、公共調達手続きへの対応は負担の掛かるものであり、手続きそのものが中小事業者にとって参入障壁となっていること、他方で、大企業は漸進的なソリューションを提供するのに長けているが政府にとって本当に必要な革新的なソリューションには中小事業者の方が適していること、を指摘している。興味深いのは、発注規模が大きいと中小事業者による入札が困難になるため、それを避ける意味でもモジュラー契約が有効であると示唆している点である。

尚、25の施策との関係性ははっきりしないが、2012年7月6日付で、連邦調達政策部(OFPP)から通達*5が発行されており、政府調達の実態として中小事業者への発注が依然として低率に留まっていることを踏まえつつ、積極的に中小事業者への発注を増やし、その状況について行政管理予算局(OMB)に報告するよう求めている。

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*1
“Contracting Guidance to Support Modular Development”, (OFPP, 2012/06/14)
https://www.whitehouse.gov/sites/default/files/omb/procurement/memo/contracting-guidance-to-support-modular-development.pdf
https://www.whitehouse.gov/sites/default/files/omb/procurement/guidance/modular-approaches-for-information-technology.pdf
*2
IDIQ : Indefinite-delivery indefinite-quantity
*3
PWS : Performance Work Statement
*4
Greater Accountability and Faster Delivery Through Modular Contracting
https://www.whitehouse.gov/sites/default/files/omb/procurement/guidance/modular-contracting-blog.pdf
*5
“Follow-up: April 25, 2012 Meeting of the Small Business Procurement Group”, (OFPP, 2012/07/06)
https://www.whitehouse.gov/sites/default/files/omb/procurement/memo/follow-up-april_25-2012-meeting-of-the-small-business-procurement.pdf