2013年03月24日

オバマ政権下のITマネジメント改革

5.1. 政府説明責任院(GAO)による評価:支出情報の公開に対する評価

これまでの章で述べてきた内容は基本的に連邦政府自身の開示する資料に基づいている。これらの施策に対し、政府説明責任院(GAO)により第3者の視点からなされた多数の評価報告書があり、その記載によれば進捗にも成果にも課題があるとされる。第5章ではこれらの評価報告を概観し、オバマ政権の施策の課題を取り上げる。

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第2章で述べたようにオバマ政権における行政改革の屋台骨となっているのがオープンガバメント構想であり、中でもとりわけIT投資との関連性が深いのが透明性原則に基づく支出情報の徹底した公開である。支出情報はUSASpending.govを通じて広く一般に公開されているが、その質については課題がある。政府説明責任院による2010年3月の報告書*1と、2012年7月の最新の報告書*2の双方にもとづいてこれらの課題を取り上げる。

USASpending.govの設立は2006年の政府拠出の説明責任と透明性に関する法律(FFATA)に基づくものであるが、同法では連邦政府による施行状況について検証し議会に報告するよう政府説明責任院に命じている。これに従い、政府説明責任院は2009年6月から2010年3月に掛けて調査を実施し、その結果が次のようにまとめられている。

  • 調査時点で29省庁の内の9省庁において、報告すべき合計15の補助金支出に関する情報が報告されていなかった。しかも、行政管理予算局では報告の実施状況を検証する仕組みを備えておらず、各省庁の自発的な協力だけを頼りにしていた。
  • 100件のランダムサンプリングに基づく支出情報の調査では、USASpending.gov上の情報とその情報源となった省庁の開示情報との間に幅広い不一致が見られた。100件のどのサンプルにも、少なくとも1個の空欄、または間違い、または情報の不足が含まれていた。この一因は行政管理予算局のガイダンスの記載が不十分であることによる。

これ以外にも調査時点での情報開示の遅れ(主契約のみの情報開示で下請け契約の情報を欠いているなど)が指摘されているが、全体として大きな課題と言えるのは、情報の正確性や充実度に問題があり、にも関わらず行政管理予算局による対策が不十分なことである。政府説明責任院では講ずべき是正措置として、検証プロセスの整備やガイダンスの更新など幾つかの勧告案を示している。第2章で触れた行政管理予算局による「政府支出の透明性」*3や「政府支出の透明性と子請け支出および報酬情報の報告」*4といった覚書はこの勧告に沿ったものとも見ることができる。

上述の背景を踏まえつつ2012年7月に公開された最新の調査報告では、勧告に沿った改善の取組が順次進められていることを認識する一方で、次のような課題が指摘されている。

  • USASpending.gov上に以前は掲示されていた、省庁からの提出情報の適時性や完全性に関する情報が消えてしまっている。この情報は行政管理予算局により管轄されていた。
  • 前掲の「政府支出の透明性」の覚書では前項に言う適時性および完全性、そして正確性を開示するためのダッシュボードをUSASpending.gov上に設け、四半期ごとに更新するものとしていたが、調査時点ではそのようなダッシュボードが存在していない。
  • 行政管理予算局にはUSASpending.govの利用状況を議会に対して年次報告することが法的に求められているが、2010年7月に1回の報告があっただけでその後の報告が継続していない。同報告では同サイトが一般利用者からのアクセスを極めて多く集めていることが指摘されており、行政管理予算局ではこれら利用者からのフィードバックに基づき改善を進めることになっていた。

2012年7月13日時点で政府説明責任院が行政管理予算局の関係者に行ったインタビューでは、データの品質に関する情報を一般に公開するためのダッシュボードという考え方は最早持っていないとの回答であった。行政管理予算局の判断によれば、これまでに発行した覚書等に基づく情報の品質改善活動を徹底したいとのことである。

以上のように、理念としては画期的であると言えるオープンガバメント構想に基づく支出情報の公開も、実施側面においては課題を抱えている状況である。政府説明責任院の報告からも窺われるように、情報公開の監督を担う行政管理予算局の取組は十分でない。他方で、情報を提出する主体となる各省庁の取組も疎かにされているわけではない。特に、リーマンショックを受けた復興法関連の支出情報の公開については各省庁の内部で正式の指針や手続きの整備が進んでいる。行政管理予算局以上に各省庁の自発的な取組が重視される傾向にあると言える。

興味深いのは、支出情報の一般公開を徹底することそのものから各省庁が得る便益は必ずしも大きくない、という一部省庁からの指摘である。自らの業務遂行に必要な情報の洗い出しや確保が十分であるとして、それを外部に公開したところで追加的に便益が得られるかどうかは状況による。これが連邦政府内において大勢を占める認識なのかどうかは政府説明責任院の報告からは判然としないが、このような声もあって、外部公開を前提としない自発的な取組に対する揺り戻しの力が働いている可能性もある。


*1
GAO-10-365, “Implementation of the Federal Funding Accountability and Transparency Act of 2006”, (GAO, 2011/03/12)
http://www.gao.gov/products/GAO-10-365
*2
GAO-12-913T, “Efforts to Improve Information on Federal Spending”, (GAO, 2012/07/18)
http://www.gao.gov/products/GAO-12-913T
*3
Memorandum, “Open Government Directive – Federal Spending Transparency”, (OMB, 2010/04/06)
https://www.whitehouse.gov/sites/default/files/omb/assets/open_gov/OpenGovernmentDirective_04062010.pdf
*4
Memorandum, “Open Government Directive – Federal Spending Transparency and Subaward and Compensation Data Reporting”, (OMB, 2010/08/27)
https://www.whitehouse.gov/sites/default/files/omb/open/Executive_Compensation_Reporting_08272010.pdf