2013年03月24日

オバマ政権下のITマネジメント改革

5.2. 政府説明責任院(GAO)による評価:ITダッシュボードとTechStatセッションに対する評価

情報公開の質に問題があるとの指摘はUSASpending.govに限定された問題ではない。IT投資に直接に関わるITダッシュボードにも、更にその原型であるManagement Watch Listにも同様の問題は見られ、その解消に向けた取組が連綿と続いて今に至っていることは第2章でも触れた通りである。以下では過去に認識された課題を掘り下げると共に、それがITダッシュボードにおいてどう改善され今もなお残存しているのか、そしてTechStatセッション自体にも見られる各種の課題がどのようなものであるのかを述べる。

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Management Watch Listの課題

Management Watch Listは毎年行政管理予算局に提出される書式300を主な情報源として編成される要監視IT投資プログラムの一覧であり、2004会計年度から2008年頃に掛けて用いられていた。この一覧を元に、更に注視すべきプログラムをまとめたものがHigh Risk Listである。これらの一覧の質は書式300に記載の情報に大きく左右される。Management Watch Listに関して政府説明責任院より指摘された課題は、正にこの書式300の質の課題であった。

書式300はビジネスケースとも呼ばれ、IT投資プログラムの目的、概要、課題、是正措置が記載される。2007年9月の報告*1では、実際に行政管理予算局へ収集される書式300について次の問題点が指摘されている。

  • 書式300の記入規定に沿っていない記載がなされる場合がある他、そもそも記載が欠如している場合がある。
  • マネジメントおよび報告に関する連邦政府標準もしくは各省庁内標準の規定に対する準拠を示す証拠付けが必ずしもなされない。例えば、行政管理予算局の規定に従う形で記載された書式300に含まれるコスト分析が見当たらなかった。
  • 実費報告の欄に記載の内容が十分に管理された費用計上の仕組みに裏付けられておらず信頼できない。適切な仕組みがない場合、省庁は一般にその場凌ぎの手順で費用の情報をひねり出している。

各省庁に対するヒアリングによれば、これらの問題は省庁の内部における情報の集計・管理の仕組みが不適切であることに起因して生じたものである。3つめの指摘にあるその場凌ぎの手順による対応が如実に表れているのが、第3章でも述べたベースラインの不適当かつ頻繁な引き直しであると言える。再掲すると、連邦政府の主要なIT投資プログラムの48%が何らかのベースライン引き直しを経験しており、更にその内の51%は少なくとも2度の、11%は4回以上の引き直しを実施していた*2。ベースライン引き直しの理由はプロジェクトの目標変更や拠出予算の変動とされ、各省庁ともこうした引き直しに関する原則を内規として設けていたものの、包括的で整備された内規は2008年7月時点では皆無であった。具体的には、新しいベースラインの策定および検証に関する手続きを規定するといった、政府説明責任院が認識するところのベストプラクティスが反映されていなかったのである。政府説明責任院は、この一因は行政管理予算局からガイダンスが発行されていないことにあるとも指摘した。

以上が2008年頃までに認識されていたManagement Watch Listの課題である。ここでも支出情報についての評価と同様に、情報の質、各省庁自身の取組の重要性、行政管理予算局による支援の必要性という3つの要素が見出される。時期の違いも考慮すれば、これらは連邦政府におけるマネジメント上の情報の集約と分析における一般的課題であると考えられる。


*1
GAO-07-1211T, “Further Improvements Needed to identify and Oversee Poorly Planned and Performing Projects”, (GAO, 2007/09/20)
http://www.gao.gov/products/GAO-07-1211T
*2
GAO-08-1051T, "OMB and Agencies Need to Improve Planning, Management, and Oversight of Projects Totaling Billions of Dollars", (GAO, 2008/07/31)
http://www.gao.gov/products/GAO-08-1051T