2013年03月24日

オバマ政権下のITマネジメント改革

5.3. 政府説明責任院(GAO)による評価:ITマネジメント改革のための25の施策に対する評価

本稿執筆時点では25の施策はひとまずの完了を見ている予定となっている。しかし、幾つかの施策については最後に遅延の報告がなされて以後、具体的な進捗を示す資料が開示されていない。政府説明責任院(GAO)の直近の調査でも、行政管理予算局(OMB)の主張する進捗と実態とには乖離があるとの指摘がなされており、単純に取組が成功したとは言えない状況である。

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2012年の4月から7月にかけて、政府説明責任院は25の施策に関する総合的な評価報告書を4編*1*2*3*4公開した。合計200頁以上ものこれらの報告書は、25の施策の予定期間満了を迎えての棚卸評価に相当する。以下ではこの4編の内容を要約して紹介する。

実績の全体評価

政府説明責任院が特に重要と判断した10の施策の内、2011年12月時点で完了していたと政府説明責任院が判断したものは3つで、残る7つは部分的な完了に留まった。本来ならば何れも完了している予定のものである。遅延を生じた7つの施策に共通するのは内容が複雑さを伴っていることであり、2012年の棚卸調査の時点でも取組は継続している。これに対し、政府説明責任院が部分的完了とみなした7つの施策の内の4つを、行政管理予算局は完了したものと認識している。行政管理予算局の見解によれば、評価に差異を生じた原因は長期的な継続性を持つ施策の取り扱いであり、継続性を確立するところまで漕ぎ着けることを行政管理予算局としては完了とみなしたとのことであった。政府説明責任院はこれに同意せず、上掲の10の施策*5について次のような評価を与えている。行政管理予算局との間で認識に差異を生じている部分については赤文字で強調した。

  • 施策1.データセンター統合計画の実施を補強する。
    • 行政管理予算局の評価:完了   政府説明責任院の評価:部分的完了
    • 2011年、各省庁は更新された統合計画を発行し、データセンター統合の取組における専任プログラムマネージャを指名した。また、行政管理予算局は省庁のこれらプログラムマネージャらから構成される政府横断のタスクフォースを設置し、月次で会合を開くとともに、データセンターの閉鎖に関する進捗を広く一般に開示するためのダッシュボードを立ち上げた。しかし、省庁の更新した統合計画の中には必須要素を欠いたものが含まれる。政府説明責任院がレビューを行った3つの省庁*6の中では、司法省の計画においてマイルストーンの設定が欠けていた。加えて、2012年2月の調査報告*7では、同様のギャップが複数の省庁の統合計画の中に見出された。計画の不備について各省庁に問うたところでは、データセンターの統合計画作りには時間が掛り、多くの場合にはそれが不足しているとのことであった。
  • 施策3.「クラウド優先」のポリシーへ切り替える。
    • 行政管理予算局の評価:完了   政府説明責任院の評価:部分的完了
    • 連邦CIOはクラウドコンピューティングの利用を促す戦略を発行し、各省庁にはクラウドに移行すべき3つのサービスを特定するよう求めた。加えて、政府説明責任院が調査対象とした3つの省庁ではこれらのサービスの移行計画を策定済みであり、2011年12月を目標とした少なくとも1つのサービスの移行をそれぞれ完了していた。しかし、どの省庁の移行計画にも重要な必須事項の記載が欠けていた。具体的には、必要なリソースに関する議論、移行のスケジュール、旧システムの取り扱いに関する計画などである。ただし、政府説明責任院では継続して7つの省庁におけるより詳細なレビューを進め、その結果として不足情報が大幅に減少する、クラウドへの移行が遅れていた事案について年末を目標とする最終スケジュールが設定されるなどの改善が夏までに確認された。
  • 施策4.セキュアなIaaSソリューションのための典型契約を整備する。
    • 行政管理予算局の評価:完了   政府説明責任院の評価:完了
    • 一般調達庁はセキュアなクラウド型サービスによるインフラソリューションに関し一連の典型契約を整備し、連邦政府全体からこれらを利用できるようにした。2012年1月の時点で、各省庁は一般調達庁により認証された3つのベンダーから選んでクラウド型ソリューションを調達できる状態を達成した。
  • 施策10.ベストプラクティスの共有プラットフォームを立ち上げる。
    • 行政管理予算局の評価:完了   政府説明責任院の評価:部分的完了
    • CIO協議会はプログラムマネージャらがベストプラクティスとケーススタディの情報を交換することのできるWebベースのコラボレーションポータルを開発し、政府説明責任院の調査対象となった3つの省庁はいずれもケーススタディを行政管理予算局に引渡し、ポータルにも掲載された。しかし、ポータルに掲載される情報は効果的に体系化され編成されているとは言えず、プログラムマネージャらがデータベースを検索し、自身の課題を解決するために情報を用いることを困難にしている。例えば、クラウドコンピューティングに関するベストプラクティスの検索を行うと13,000件以上もの結果が得られるが、期間指定を行い昨年分の範囲に対象を制限すると14件にまで結果が減少する。しかも、クラウドコンピューティングに関する明確なベストプラクティスを提示している資料はその内の8つのみである。CIO協議会の副議長によれば、これは立ち上げたばかりのシステムゆえの不備であり、機能性の向上に向けた活動を継続中とのことである。
  • 施策13.IT調達専門家の精鋭部隊を設計・育成する。
    • 行政管理予算局の評価:完了   政府説明責任院の評価:完了
    • 2011年、連邦調達政策部はIT調達の専門家という職種を定義するガイダンスを発行した。当該の職に就くにあたっての要件、ガイダンス、カリキュラムとプロセスが定められ、彼らの有するIT調達のスキルおよび能力を強化するためのガイダンスも整備された。精鋭集団の育成については、元来各省庁の自発的判断に依拠するため、政府説明責任院の調査結果においても各省庁の状況は様々であった。退役軍人省はIT調達に特化した精鋭集団を抱えるが、国土安全保障省では立ち上げ中であり、法務省ではそのような集団を賄うべきかどうかを検討中である。
  • 施策15.モジュラー開発のためのガイダンスとひな形文書を整備する。
    • 行政管理予算局の評価:部分的完了   政府説明責任院の評価:部分的完了
    • 連邦調達政策部の関係者によれば、同部ではモジュラー開発のためのガイダンスの策定に向けてITおよび調達分野のコミュニティと共同作業を進めており、産業界側の指導者らからフィードバックを得たところである。しかし、政府説明責任院の調査報告の時点では連邦調達政策部はモジュラー開発を支援するためのガイダンスおよびひな形、サンプル文書を発行できていない。遅延の原因は、政府と産業界の間でモジュラー開発とは何かを一貫した形で定義することが困難であることによるという。(4.5で述べたようにその後ガイダンス類は発行された。)
  • 施策17.モジュラー開発に適したIT予算のモデルを議会と共同で策定する。
    • 行政管理予算局の評価:部分的完了   政府説明責任院の評価:部分的完了
    • 既存の法的な枠組みの中で予算の取扱いにどのような柔軟性が存在しており追加的な裁量の確保が必要なのかどうかを分析したと行政管理予算局は回答している。また、追加的な裁量についての具体案(他年度予算や拠出の順次拡張)を推進するために国会内の幾つかの委員会と検討を進めた。更に、政府説明責任院の調査した3つの省庁では、追加的な差利用の確保によって結果の改善が果たされるプログラムが見出された。例えば、国土安全保障省はITの運用とメンテナンス機能のための運転資金という枠組みを提案している。しかし、行政管理予算局のこれらの着想に対し、予算にまつわる新たな権限を付与する法の整備は現段階では進んでいない。同時に、行政管理予算局ではこうした追加的な裁量と引換になるはずのプログラムの透明性向上に関する選択肢を特定できていない。行政管理予算局の主張によれば、議会との連携におけるスケジュール上の遅延は、そもそもの25の施策が2010年12月に発行されたものであり、既に2011会計年度が始まった後であったことに一因があるとしている。つまり、現状から言えば次は2012年10月より始まる2013会計年度以降にならなければ制度改訂を実態に反映することもできないという説明である。
  • 施策20.各省庁のCIO管轄下のコモディティ型のIT支出を議会と共同で整理統合する。
    • 行政管理予算局の評価:部分的完了   政府説明責任院の評価:部分的完了
    • 2011年8月に行政管理予算局は覚書を発行し、各省庁はCIOの主導の下でコモディティ型のITサービスを統合するよう求めた。加えて、連邦CIOは国会内の幾つかの委員会との間でこのようなコモディティ型ITの統合に関する重要性を議論した。しかし、行政管理予算局の申告によればこの施策はスケジュール上の遅延を生じており、覚書の内容の実践について議論を継続するとともに、コモディティ型ITに適した拠出モデルの開発を省庁および議会との間で継続中である。更には、コモディティ型のITサービスを共有型サービスへと移行するという課題について、政府説明責任院の調査した3省庁では行政管理予算局に対し報告をおこなっていなかった。省庁の説明によれば、その一因は行政管理予算局のガイダンス発行を待っているためとのことであった。ここでも前項の施策17の場合と同様に、会計年度とのタイミングの兼ね合いの問題が遅れの一因であると行政管理予算局は説明している。
  • 施策21.投資レビュー委員会(IRB)を改革し強化する。
    • 行政管理予算局の評価:完了   政府説明責任院の評価:完了
    • 2011年、行政管理予算局は省庁からのIT予算申請に関する要件を改定した。行政管理予算局はまた各省庁のCIOを対象として、TechStatセッションの実施についてのガイダンス策定、発行、トレーニングの提供を行った。ここでいうTechStatセッションの実施には、説明責任に関するガイドライン、関係者への呼びかけとまとめ上げのコツ、評価プロセス、報告プロセスを含む。2011年12月までには24の主要省庁全てで少なくとも1つのTechStatセッションを実施済みである。
  • 施策22.各省庁のCIOと連邦CIO協議会の役割を改正する。
    • 行政管理予算局の評価:完了   政府説明責任院の評価:部分的完了
    • 2011年8月、行政管理予算局はCIOの役割を強化するよう各省庁に指示する覚書を発行した。これにより、各省庁のCIOは指針の策定とインフラの維持にばかり責任を負うのではなく、あらゆるITのポートフォリオ・マネジメントを包括する役割を担うよう位置付けが変更された。しかし、CIOの権限は省庁によって様々に異なっており、各省庁が覚書の指示を実現するには時間がかかることをを行政管理予算局は認めている。政府説明責任院が調査した3省庁では2人のCIOがあらゆるITプロジェクトを包括する真のポートフォリオ・マネジメントの任にあたっていると回答した一方、国土安全保障省のCIOの回答は否定的であった。なお、政府説明責任院では各省におけるIT投資ガバナンスのアセスメントを現在進めている。CIO協議会の役割の変更については、マネジメント上のベストプラクティスをテーマとする委員会を招集した。この委員会では各省庁の内部で行われるTechStatセッションの結果を分析し、連邦政府の傾向を論じた報告書を2011年12月に発行した。

*1
GAO-12-461, "Progress Made; More Needs to Be Done to Complete Actions and Measure Results", (GAO, 2012/04/26)
http://www.gao.gov/products/GAO-12-461
*2
GAO-12-745T, " Progress Made; More Needs to Be Done to Complete Actions and Measure Results", (GAO, 2012/05/24)
http://www.gao.gov/products/GAO-12-745T
*3
GAO-12-756, "Progress Made but Future Cloud Computing Efforts Should be Better Planned", (GAO, 2012/07/11)
http://www.gao.gov/products/GAO-12-756
*4
GAO-12-742, "Agencies Making Progress on Efforts, but Inventories and Plans Need to Be Completed", (GAO, 2012/07/19)
http://www.gao.gov/products/GAO-12-742
*5
調査対象外となった残る15の施策は次の通りである。
施策2. データセンター共同利用のための政府横断型の取引所を設ける。
施策5. コモディティ型サービスのための典型契約を整備する。
施策6. 共有サービスのための戦略を策定する。
施策7. ITプログラムマネジメントに関する正式なキャリアパスを策定する。
施策8. ITプログラムマネジメントのキャリアパスを連邦政府全域に拡げる。
施策9. 統合プログラムチームの運用を要求する。
施策11. TechFellowプログラムを立ち上げる。
施策12. ITプログラムマネージャの官民間での異動を可能にする。
施策14. IT調達のベストプラクティスを特定し連邦政府全域で採用する。
施策16. 革新的な中小技術企業への参入障壁を低減する。
施策18. 柔軟なIT予算モデルのためのガイダンスと参考資料を整備する。
施策19. 柔軟なIT予算モデルの適用範囲を議会と共同で拡げる。
施策23. TechStatを部局レベルで展開する。
施策24. 「迷信打破」キャンペーンを立ち上げる。
施策25. 要求定義に先立つ官民交流のための双方向プラットフォームを立ち上げる。
*6
国土安全保障省(DHS)、法務省(DOJ)、退役軍人省(VA)である。以下同様。
*7
GAO-12-453SP, "Status of Actions Taken to Reduce Duplication, Overlap, and Fragmentation, Save Tax Dollars, and Enhance Revenue", (GAO, 2012/02/28)
http://www.gao.gov/products/GAO-12-453SP