2010年03月21日

21世紀の米国流行政革命

3. FEAプログラム

連邦政府は幾つもの省庁からなる連合体であるが、国民から見れば結局のところは1つの政府である。縦割り行政が招く業務と情報システムの重複による無駄を洗い出し、一丸となった1つの政府として国民に向き合うためには、省庁横断での業務分析のツールが必要になる。これが連邦政府全体を対象にした連邦エンタープライズアーキテクチャ(FEA)である。

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Clinger-Cohen Actにより導入された枠組みは革新的なものであった。更にその後、各省庁のCIOを集めた連邦CIO協議会#1が設置され、省庁間でのノウハウの共有、全体的な施策の検討などが行われる場となっている。同時に、これら90年代後半における動きに並行して、社会が大きく変化していたことを忘れてはならない。インターネットの普及である。

インターネットの普及がもたらした変化の1つは、行政と市民の間に新たな窓口を設けたことである。とりわけ、Webサイトを通じた年中無休の情報公開、各種申請の受付は、行政サービスの利便性向上にそれまでにない可能性を与えた。米国連邦政府もまたこの機会を捉え、数多くの行政サービスが主にWebサイトの形で提供された。その数は2001年夏の時点で、22,000余のWebサイト、ページ数にして3,500万ページにも及んだ。しかし、膨大な電子サービスの間には幾つもの重複が存在し、利用者側の混乱と、運用コスト面での無駄に繋がっていた。これら電子サービスの混乱は縦割り行政の反映とも言え、各々の省庁の内部にとどまることなく連邦政府全体を横断して、全体最適の実現に取り組む必要性が明らかとなった。*1

2000年代に入りブッシュ政権に切り替わった後、2001年夏にはQuickSilverタスクフォースが立ち上げられた。同タスクフォースは連邦政府内の電子行政サービスを調査し、2002年電子政府戦略を立案、報告書をとりまとめた。#2報告書では、サービスに多数の重複があることを指摘すると共に、それらの統合・一本化と、重複の再発を防止するためのマネジメント技法の導入を唱えた。これがFEAプログラムである。すなわち、連邦政府の全体最適化の観点から、次の論点を明らかにするEAの策定と、そのEAに基づく政府中枢からのコントロールを打ち出したのである。

  1. 市民/企業にとっての行政サービスとはそもそも何か?
  2. それらの行政サービスを支えるIT資産/技術/データはどのようなものか?
  3. 電子行政サービスの成果を測る客観的指標は何か?

これはEAに基づくPBM型のIT投資マネジメント手法を、連邦政府全体のIT投資マネジメント向けに拡大したものに他ならない。これをFEA(Fedearl Enterprise Architecture)と呼ぶ。

各省庁が策定したEAでは当該省庁の業務の一覧とIT資産の関係を捉えるのに対し、FEAでは行政サービスの利用者である市民/企業の立場から見たサービスの一覧とIT資産の関係を捉える。結果として、同一のサービスを支える業務や資産に同種のものが複数あれば重複の可能性ありと見なされ、統合の機会に繋がる。また、FEAの中にPBMにおける数値目標をはっきりと織り込むことにより、PBMとの一体性をより高めている。#3

図3.FEA参照モデルの全体構造

図3.FEA参照モデルの全体構造FEAに基づく仕分け体系をまとめたモデルがFEA参照モデルである。FEA参照モデルは業務一覧に相当するBRM、ITシステムのジャンル一覧に相当するSRMを含む。更に、ITシステムが必要とするデータ体系を表現するためのDRM、利用技術を分類するためのTRM、業務上の目標として利用されるKPIを分類するためのPRMがある。OMBはこれらをまとめてCRM(Consolidated Reference Model/統合参照モデル)として提供している。

連邦政府において各省の予算を統括する部局であるOMB は、FEAに基づく業務分析を各省に要求している。具体的には、FEAは行政業務やIT 資産を分類するための統一された系統図となっており、この系統図の中で自組織の有する業務や資産がどの位置にあるのかを、各省庁で判断して仕分ける。OMBでは収集した業務・資産仕訳を横断的に検証することにより、重複の特定、統合、業務合理化の指示へと導く体制を整備した。

代表的な例がFTF(Federal Transition Framework)と呼ばれる仕組みである。#4OMBは予算の統括を行うという性格上、毎年の予算案を各省庁から収集し精査する。この時、FEAに準拠して仕訳済みの、省庁別IT調達予算案を突き合わせ、省庁間を跨いでの重複投資が見つかれば、省庁横断でそれを統合するよう音頭をとる。このような工程を経て抽出された、省庁間で統合可能なIT支援型業務をまとめた台帳がFTFカタログである。#5OMBはFTFカタログを参照しつつ予算編成を行うよう各省庁に指示することで、積極的にIT投資の統合を進めている。


*1
以上の考察は次段に述べる2002年電子政府戦略の報告書に依る。

(参考文献)

#1
Federal Chief Information Officers Council
https://cio.gov/
#2
"E-Government Strategy", (2002/02/27) link
#3
FEAの具体的な構造は次の参照モデルによって規定されている。
"FEA Consolidated Reference Model Document Version 2.3", (OMB, 2007/10) link
#4
"Federal Transition Framework Usage Guide Version 1.0", (OMB, 2006/12) link
#5
"Federal Transition Framework Catalog of Cross Agency Initiatives Version 1.0", (OMB, 2006/12) link