2010年03月21日

21世紀の米国流行政革命

7. 情報公開とアカウンタビリティ

連邦政府の行政マネジメント改革には、何を求めて業務を進めるのか、ということの明確化と、目的が明らかであれば裁量を認めてよい、とする判断が共通して見られる。これが適切に機能していることを確かめる上で重要なのが、情報公開とアカウンタビリティの徹底である。

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NPRが与えた理念と戦略はFEA/CPIC/PBAによって肉付けされてきたと言える。そこに共通して見られるのは、何を求めて業務を進めるのか、ということの明確化であり、それと一体に、目的が明らかであれば裁量を認めてよい、とする判断が伴っている。しかし、省庁が本当に目的を明らかにできているのかどうか、認められた裁量が適切に用いられているのかどうかは、内実を詳らかに調べなければ外部からは分からない。そこで重要なのが、情報公開とアカウンタビリティの徹底である。

各省庁のマネジメントに基本方針を与えるのがGPRAに言うところの5カ年戦略計画および年次パフォーマンス計画である。これらの計画書は短期から中期における経営目標を定めた資料に相当し、達成すべき顧客満足に当たる目標と概略を示している。*1

戦略計画(Strategic Plan)

OMBに5年ごとに提出、3年ごとに見直しが義務付けられる。本計画は以下の事項を明記していなければならない。

  1. 当該省庁の包括的ミッションステートメント
  2. 全般的目的と目標:実現すべきアウトプット、当該省庁の主たる機能や業務内容
  3. 目的・目標を達成するための方策:業務プロセス、及び必要とされる資源(スキル、技術、人材、資本、情報等)
  4. 業績関連の目的・目標(年次パフォーマンス計画に記載)と本戦略計画の全般的目的・目標がどのようにリンクしているのか
  5. 全般的目的・目標の達成に重大な影響を及ぼす可能性のある、コントロール不能の外部制約
  6. 全般的目的・目標の評価基準と再評価のスケジュール

年次パフォーマンス計画(Performance Plan)

OMBと議会に対し、予算案提出(1月か2月)に合わせ毎年提出が義務付けられる。本計画は以下の事項を明記していなければならない。

  1. 各プログラム毎に達成すべき業績目標
  2. より客観的に計測可能なように数値化された業績目標(下記のSubsection (b)に該当し、免除される場合を除く)
  3. ごく簡単に記述された業務プロセス、及び必要とされる資源(スキル、技術、人材、資本、情報等)
  4. 業績を測定する具体的尺度
  5. 実績と業績計画を比較する(達成度測定)ための尺度
  6. 測定された数値の信憑性、正確性を確保・証明するための方策

Subsection (b): もしも業績目標を客観的、定量的、測定可能な形式で表現できない場合、業績計画は定性的表現で、1)達成失敗のケース(達成度が最低の場合のプロジェクト状況)、2)成功したプロジェクトの状況、を記述していなければならない。

戦略計画・パフォーマンス計画に定められた目標は、個々のプログラム、プロジェクトによって実現される。主にプログラムを対象とする予算の拠出はCPICに従った管理の対象となるが、OMBでは予算審査に際して書式300と書式53という資料の作成を各省庁に義務付けている。書式300はビジネスケースを記述した資料である。この中には予算拠出対象となるプログラムが省庁の使命に寄与することの説明、大統領の政策目標に合致することの説明、狙いとする業務上の成果と現状、プログラムのフェーズ別予算などが含まれる。書式53は省庁内の全ての主要なIT投資の一覧をFEAに従って仕分けた表である。OMBでは書式53を最初の手掛かりとして、IT調達予算の省庁間統合に向けた精査を進めることになる。

CPICよりも小さな単位での調達予算の執行状況はFPDS-NG(Federal Procurement Data System Next Generation)を通じて公開されている。#1FPDS-NGには$3,000を越える大部分の公共調達事案に関する情報が事案別に収録されており、統計的観点から調達予算の全体状況を調べることができる。FPDS-NGのオンラインサービスでは特定の条件を満たす調達事案の抽出・グラフ化機能が提供されており、特別なシステムを用いずとも、資産別、地域別、省庁別、年度別といった様々な側面からデータを集計できる。IT投資予算に関しては更にVUE ITと呼ばれる情報公開システムが整備されている。#2VUE ITはOMBの収集した書式53の情報をまとめた上で開示しているWebサイトであり、FEAによるIT投資の仕訳がなされた状態での集計結果が示されている点に大きな特徴がある。VUE ITからは省庁が個別に公開している書式300にアクセスすることもできる。最近になって、VUE ITを更に強化したIT Dashboardも公開されている。#3

プログラムの当事者だけでなく、第三者の視点で精査された情報も存在する。連邦政府において行政活動に幅広く様々なアセスメントを行っているのがGAOである。#4GAOはかつて会計検査院であったが、2004年に改称して政府説明責任院となった。旧名称からも察せられるように、その主要な任務は各省庁に対する財務監査である。しかしGAOの活動は財務に止まらず、問題事案の精査、政策評価、ベストプラクティスの抽出、様々なノウハウのガイドライン化など多岐に渡っており、連邦政府内の総合シンクタンクとして機能している。そしてGAOの発行する膨大なレポートは、過去50年分以上に及んでインターネット上で広く公開されており、内外の第三者が自由に参照できる。OMBもまた予算案審査の一環として省庁内部の取り組みを精査しており、プログラム一般についてはPART (Program Assessment and Rating Tool)と呼ばれる技法による評価を行い#5、その結果を公表している。#6また、IT投資に関してはEAの導入状況やそれに基づく業務改革の成熟度を評価している。*2


*1
前掲のJIPDEC報告書より引用。
*2
但し、成熟度評価については、オバマ政権になって以後、本稿執筆時点では情報公開が止まっている。

(参考文献)

#1
FPDS Next Generation
https://www.fpds-ng.com/fpdsng/ https://www.fpds.gov/
#2
VUE IT
http://www.whitehouse.gov/omb/egov/vue-it/index.html (リンク切れ)
#3
Federal IT Dashboard
https://www.itdashboard.gov/
#4
Government Accountability Office
http://www.gao.gov/
#5
OMB: Assessing Program Performance
https://www.whitehouse.gov/omb/performance_default/
#6
ExpectMore.gov
https://georgewbush-whitehouse.archives.gov/omb/expectmore/