この記事について

米国連邦政府は、サービス調達に関して、パフォーマンス基準調達(PBA)方式と呼ばれる手法の利用を進めている。50年ほど前から徐々に手がけられてきた同手法は、90年代から制度化が進み、2000年代に入って以後、本格的に利用されるようになった。次のような特徴を備え、現在はコモディティ型サービス*1の調達が主たる適用対象となっている。

  • 契約の要求事項として、作業の内容ではなくその結果(パフォーマンス)を定めること。
  • 契約業者のパフォーマンスの標準値を測定可能な形で定めること。
  • 品質保証監視計画の中で契約業者のパフォーマンスを確認する手順を定めること。
  • 適切である場合に契約業者へのインセンティブを取り入れること。

この調達方式では、契約業者のサービス実施の細部については指図せず、代わりに、省庁の任務に結び付いた各種目標値を示す。契約業者の裁量を高め優れたサービスを得ると共に、本質的な達成目標の設定という本来業務に省庁が注力することを目指した取組である。

※本稿は2008年3月時点での調査に基づきます。

PDF版の原稿はPBA_Guide.pdf7ステップガイドの邦訳はこちら

記事一覧

2010年03月21日
PBAガイド
1.1. 概念:概説
パフォーマンス基準調達はKPIベースで設定された業務目標の達成を契約要件とする調達方式である。PDCAサイクルとの一体性を重視した手法であり、その推進に当たっては調達手続きだけでなくPDCAを意識したマネジメントの要素に向き合う必要がある。

2010年03月21日
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1.2. 概念:パフォーマンス基準業務記述書(PWS)
パフォーマンス基準調達において調達契約の目的要件となるパフォーマンスを定義する文書がパフォーマンス基準業務記述書(PWS)である。パフォーマンス基準業務記述書はKPIベースで記述された文書であり、測定基準や許容範囲などの情報を含む。

2010年03月21日
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1.3. 概念:業務趣意書(SOO)
パフォーマンス基準業務記述書(PWS)の策定に当たっては入念な業務分析が必要であり、しばしば省庁にとって作業実施が負担となる。業務趣意書(SOO)は調達の目的を抽象的な水準に留めて記述した文書であり、パフォーマンス基準業務記述書(PWS)の策定を事業者側に委ねるアプローチと一体に利用される。

2010年03月21日
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1.4. 概念:パフォーマンス標準
実際の調達契約の結果が、目的とするパフォーマンスを達成しているかどうかを判断するためには、成功の判定基準としての標準的水準が必要である。これがパフォーマンス標準であり、パフォーマンス基準業務記述書(PWS)の中核を占める。

2010年03月21日
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1.5. 概念:品質保証監視
パフォーマンス基準調達ではサービスの細部に対する裁量の多くが契約業者に委ねられる。だからと言って省庁が何もしないでよいわけはなく、サービスの結果が目的を満たしているかどうかに注意を向ける必要がある。品質保証監視はそのためのモニタリング活動である。

2010年03月21日
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1.6. 概念:インセンティブ設計
安く発注したい省庁と高く受注したい契約業者の間には根本的な利害の対立がある。よりよいパフォーマンスの実現に対して報奨金などを設定することにより、この対立を乗り越えて利害の方向を同調させる手法がインセンティブである。

2010年03月21日
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1.7. 概念:業者選定
パフォーマンス基準調達の実施は基本的に競争入札の形式をとる。ここで重要なのが、応札してきた事業者の内の誰が最も相応しい事業者か、という判断である。パフォーマンス基準調達では金銭的指標だけによらない、ベストバリューと呼ばれる観点で判断を行う。

2010年03月21日
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1.8. 概念:プロジェクトの継続的推進体制
パフォーマンス基準調達の推進には高い専門性とノウハウが求められる。調達チームの編成はその要であり、どのようなスキルが求められ、どのような体制を維持しなければならないかが鍵となる。

2010年03月21日
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2.1. 歴史:前史~連邦調達制度の形成
米国連邦政府における調達制度は、二次大戦後の戦時体制解体の流れを受けつつ形成されてきた。パフォーマンス基準調達に至る前史は、省庁毎にばらばらであった調達制度を連邦政府内で一本化する過程であった。

2010年03月21日
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2.2. 歴史:1990年代
1990年代に入って冷戦が終結すると、それまでに蓄積された膨大な財政赤字と向き合うために、行政効率化の取組が活発化する。その主流をなしたのが国家業績レビュー(NPR)と政府業績結果法(GPRA)であり、この流れに並行して、パフォーマンス基準契約(PBC)という概念が整備された。

2010年08月09日
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2.3. 歴史:2000年代
1990年代に体系化の進んだパフォーマンス基準契約も、実際にはそれほど積極的に導入されたとは言えなかった。しかし2000年代になってブッシュ政権へと交代すると、大統領主導の行革の一環として、パフォーマンス基準調達が強力に推進されるようになった。

2010年03月21日
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3.1. 実績と課題:IT調達とパフォーマンス基準調達
パフォーマンス基準調達では手続きよりも内実の重要性が大いに高まる反面で、推進にも細心の注意が求められる。IT調達分野における幾つかの事例と、全体傾向に関する大規模調査の結果を紹介し、パフォーマンス基準調達の特徴を考える。

2010年03月21日
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3.2. 実績と課題:事例1~社会保障庁
一つ目の事例は社会保障庁(SSA)によるネットワーク管理業務の委託である。拠点の移設に伴う再配置サービスの調達であり、パフォーマンス基準業務記述書(PWS)を用いている。コモディティ型サービスの調達に当たる。

2010年03月21日
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3.3. 実績と課題:事例2~一般調達庁
二つ目の事例は一般調達庁(GSA)による調達公募オンラインシステムの更新である。このシステムは連邦政府内での調達公募の情報を集約したWebサイトであり、連邦政府における電子調達の一大拠点ともなっている。実施に当たっては業務趣意書(SOO)が用いられた。

2010年03月21日
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3.4. 実績と課題:事例3~運輸保安庁
三つ目の事例は運輸保安庁(TSA)によるIT管理型総合サービスの外部委託である。これは運輸保安庁で利用するあらゆるITインフラを全面的に外部の事業者に委託管理するという大規模な調達事案であった。しかしながら、結果には多くの問題が残った。

2010年03月21日
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3.5. 実績と課題:調査報告から見える利点と課題
失敗事例からも分かるように、パフォーマンス基準調達を成功させるためには様々な配慮が必要である。1998年頃からのパフォーマンス基準調達関連の調査を振り返り利点を確かめると共に、その中で米国政府により認識されてきた今後の課題について述べる。

2010年03月21日
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4.1. 調達労働力の開発育成:人材問題と解決への取組
パフォーマンス基準調達の成否を大きく左右するのは調達チームおよびその周辺の人材である。連邦調達政策部(OFPP)は調達労働力の現況把握と育成プログラムを主導しつつ、各省内にも人材育成のためのガバナンス体制を築いている。

2010年03月21日
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4.2. 調達労働力の開発育成:調達コンピテンシ
連邦政府では人材の持つ能力をスキルとコンピテンシに分けて整理している。スキルは資格などに相当する専門技能であり、コンピテンシは幅広く色々の業務における有能性に繋がる行動特性である。連邦調達研究所(FAI)では調達分野におけるコンピテンシをまとめている。

2010年03月21日
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4.3. 調達労働力の開発育成:育成プログラム
連邦政府において広く提供されている調達関連の人材育成プログラムは、連邦調達認定制度、コース教育、ガイダンス、の3種類からなる。職員によるスキルおよびコンピテンシの獲得を目指すだけでなく、その継続的な更新による維持を狙いとしている。

2010年03月21日
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4.4. 調達労働力の開発育成:労働力アセスメント
労働力アセスメントは現在の労働力構成を明らかにすることで、将来に向けた人的資本整備の戦略を組み立てる基盤となる。調達分野における労働力アセスメントは連邦調達研究所(FAI)によって多面的に実施されている。

2010年03月21日
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4.5. 調達労働力の開発育成:調達労働力の現状
労働力アセスメントの結果判明した調達労働力の現状は厳しいものである。調達に関連する大部分の専門職階系統において20%前後の職員が退職資格年齢に到達しており、今後もこの比率は上昇基調が続くと見込まれる。世代交代を進める必要性が滲む。



*1
サービス要件や品質水準、価格等に通り相場の確立している一般的なサービスを意味する。