2010年03月21日

PBAガイド

2.1. 歴史:前史~連邦調達制度の形成

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米国連邦政府における調達制度は、二次大戦後の戦時体制解体の流れを受けつつ形成されてきた。パフォーマンス基準調達に至る前史は、省庁毎にばらばらであった調達制度を連邦政府内で一本化する過程であった。

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連邦政府における調達制度の形成

米国連邦政府の調達制度は1970年代から1980年代に掛けて整備されたものである。それまでの連邦政府には省庁横断で運用される標準的な調達規則が存在せず、組織ごとに独自の調達規則を設けていた。そうした状況に対して1960年代の後半に議会による詳細なヒアリングが2度行なわれ、連邦政府の調達制度は様々な課題への個別の対応を乱雑につなぎ合せた状態であり、過度に複雑化していると結論された。これを受けて1969年に、議会は「政府調達に関する委員会」*1を設置し、連邦政府の調達システム改革への提言を行うこととなった。委員会の精査に基づいて1972年に提出されたレポートでは、連邦政府の全域に渡って政府調達の監督を行う中枢機関の欠如が特に大きな問題として指摘された。#1

1974年、上記の委員会からの提言に基づき、連邦政府全体の調達を統括し、また統一された包括的な標準調達制度を整備する目的で、当初5年間の時限立法として連邦調達政策部法#2が制定され、行政管理予算局内に連邦調達政策部(OFPP)*2を新たに設け、同部は次の役割を担うものと法的に位置付けられた。 (連邦議会図書館の同法要約から引用)

  1. 行政省庁における統一された調達規則を確立すること。
  2. 調達指針を決定するにあたって利害関係者から効果的な意見収集をする方法の基準およびプロセスを確立すること。
  3. 財やサービスの民間からの調達における指針、規制、手続き、書式のモニター、改訂を行うこと。
  4. 調達指針、規制、手続き、書式の研究の推進と実施を行うこと。
  5. 調達データの収集と改善の体制を確立すること。
  6. 調達担当者の採用、訓練、練達、成績評価のプログラムを勧告すること。

上記の内容は設立時点での規定であり後には種々の変更が加えられたが、連邦政府全体での調達に関しガイドラインを定めその運用について監督を担う部署であること、また、その状況を監視し、必要となる人材育成を行うこと、という基本的な性格は現在に至っている。

業務パフォーマンスへの着眼

1980年10月、連邦調達政策部によりパンフレット「サービス契約のための業務パフォーマンス記述書の策定と利用」が発行された。#3このパンフレットは省庁でサービス契約を行なう際のガイドラインをまとめたものである。この時に、パフォーマンス基準での調達に関する考え方が盛り込まれた。同パンフレットでは、必要とされるサービス業務の構成と当該サービス業務によって達成されるべき目標を明記した業務パフォーマンス記述書iiを策定した上で、目標が達成されているかどうかを随時チェックする監視体制を設ける方法などを述べている。業務定義、目標定義、品質保証など、パフォーマンス基準調達の主な要素が含まれている点で、このパンフレットは後のパフォーマンス基準調達の原型となった。

連邦調達規則の整備

1984年、それ以前は国防総省と文民省庁で異なった規則*3を用いていた状況に対し、これらを統一するため、1983年改正連邦調達政策部法#4を根拠として連邦調達規則*4が整備された。#5同規則は連邦政府の各省庁において参照される調達のための規定集であり、各省庁には幾らかの付加的個別規定を定めることが認められるものの、それらの基盤および標準となる統一規定として位置付けられている。以後、調達に関する政策は原則として本規則の改訂を通じて施行されることとなる。

連邦調達制度の確立

1988年、こうした実績を経て、それまでは5年毎の時限組織#6であった連邦調達政策部の恒久化が予算措置の恒久承認を通じて認められた。そして、同部の長が全体を指揮する形で、国防総省、NASA、一般調達庁の長をメンバーとする連邦調達委員会が設けられ、その下で連邦調達規則が共同で発行され維持される現在の体制が整った。#7 #8連邦政府各省庁における調達の課題は連邦調達政策部による監督の下で吟味され、同部や行政管理予算局からの通達や覚書を通じて各機関に指示が及ぶ他、連邦調達規則にこれを反映することで広く共有される体制が形成されたのである。

1990年に至るまでのこうした前史を通じ、パフォーマンス基準調達の基本要素となる概念やそれを支える運用組織としての連邦調達政策部や連邦調達システムの成立など政府の統一的調達政策の体制が整った。しかし、この時代には主に調達制度の統合と明確化に重点が置かれており、パフォーマンス基準調達はその一部に垣間見えるに過ぎなかった。むしろ様々な要素を統合した反面で、複雑で巨大な調達システムとなってしまい、調達の合理化が次代以降の課題ともなった。


*1
Commission on Government Procurement
*2
Office of Federal Procurement Policy
*3
国防総省:Defense Acquisition Regulations, 1980-84; Armed Services Procurement Regulations, 1948-80
文民省庁:Federal Procurement Regulations, 1949-84
なお、ITに関してはFederal Information Resources Management Regulationsが 1965-96の間存在した。
*4
FAR, Federal Acquisition Regulation

(参考文献)

#1
NSIAD-88-35, "Procurement: Assessment of the Office of Federal Procurement Policy", (GAO, 1987/11/20) link
#2
P.L.93-400, "Office of Federal Procurement Policy Act of 1974", (1974-08-30) link
#3
"OFPP Pamphlet No. 4, A Guide for Writing and Administering Performance Statements of Work for Service Contracts", (OFPP, 1980/10) link
#4
P. L. 98-191, "A bill to amend the Office of Federal Procurement Policy Act of 1983", (1983/12/01) link
#5
NSIAD-88-35, "Procurement: Assessment of the Office of Federal Procurement Policy", (GAO, 1987/11/20) link
#6
P. L. 96–83, "Office of Federal Procurement Policy Act Amendments of 1979", (1979/10/10) link
#7
"OFPP Statutory responsibilities" link
#8
P.L.100-679, "Office of Federal Procurement Policy Act Amendments of 1988", (1988/11/17) link